「金融業界に行きたいけれど、銀行とリース、結局どっちがいいの?」
就活でも転職でも、必ず出てくるこの疑問。どちらも「企業にお金を届ける」という点では同じ金融業ですが、中身を比べてみると、仕事内容もキャリアの積み上がり方もかなり違います。
先に結論を言うと、平均年収の水準はほぼ互角です。差が出るのは、仕事内容の質、転勤の形、そして専門性の積み上がり方。この3点で比べると、自分に合う方が見えてきます。
なお、この記事の年収データはすべて各社の有価証券報告書(2026年3月期)に基づきます。注意点として、金融グループの数字を見る際は「持株会社(FG)」と「銀行本体」を分けて見る必要があります。この区別をしないと比較を誤ります(詳しくは年収の章で解説します)。

筆者は現役のリース業界の人間ですが、本記事は特定企業の内部事情ではなく、公開データと業界の一般的な見方をもとに、できるだけ中立に比べることを心がけました。
リース業界そのものの基礎から知りたい方は、まずこちらのガイドからどうぞ。
仕事内容の違い:お金を貸す側と、モノを買って貸す側
銀行の法人営業:与信で「会社を見る」仕事
銀行の法人営業の中核は、与信判断です。決算書と事業計画を読み込み、「この会社にいくらまで貸せるか」を見極める。融資を実行した後も、返済が滞らないようモニタリングと回収管理が続きます。
扱う商品は融資が中心で、預金・為替・デリバティブなどを組み合わせて提案していきますが、すべての起点になるのは「会社を見る目」です。財務を読み解く力こそが、銀行員の専門性の土台になります。
リースの法人営業:与信に「モノを見る目線」が加わる
リースの営業でも与信判断は欠かせません。ただし、それに加えて「モノを見る目線」が必要になります。工作機械や車両、店舗設備といった物件そのものの価値、契約終了時点での残価、中古市場の動向まで見たうえで、料金と契約条件を設計する仕事です。
また、企業の設備投資の相談から仕事が始まることが多いため、「何を買うか」の段階から顧客と話ができます。顧客との距離が近く、提案の自由度が高いのは、リースの営業の大きな特徴です。
提供する商品の幅も広く、ファイナンスリースやオペレーティングリースといったリース契約のほか、割賦販売やレンタル、融資に近い商品まで、顧客の財務戦略に合わせて組み立てます。「モノ」と「お金」の両方を設計する仕事、と言い換えることもできます。
顧客との距離と、案件の進め方
銀行は組織が大きく、稟議・審査の階層が厚い分、大きな金額を動かせますが、個別案件での裁量は組織の中で調整されていきます。一方、リース会社は組織規模が相対的にコンパクトで、一担当が顧客折衝から条件設計、契約実行まで一貫して担う場面が多く、案件のバリエーションも広くなりがちです。
規制の差が生む「できる仕事」の差
見落とされがちですが、制度面の違いも大きなポイントです。
銀行は銀行法の枠組みの中で営業しており、銀行本体が営める業務は銀行業務とその付随業務に限られます。子会社が営める業務の範囲も法律で定められており、一般事業会社の株式の保有にも制限があります。さらに、自己資本比率規制や大口信用供与の規制があるため、融資以外の形で大きくリスクを取ることや、事業そのものへの投資には踏み込みにくい構造です。
これに対してリース会社は、銀行法の適用対象ではありません。そのため銀行法の事業範囲規制に縛られにくく、物件への投資にとどまらず、事業開発や事業会社への出資、非金融の事業そのものなど、リスクを取った事業投資にまで手が届きます。大手リース会社が再生可能エネルギーや環境・ヘルスケア関連など、金融の枠を超えた事業に進出しているのは、この自由度が背景にあります。
もちろん、リース会社に規制が「ない」わけではありません。リース会社も貸金業法や割賦販売法といった業法の規制は受けますし、銀行系のリース会社は親会社グループの連結規制の影響を間接的に受ける場面もあります。それでも、「事業の範囲を法律で細かく区切られていない」という点は、担当できる仕事の幅を考えるうえで無視できない差です。
安定したリース本業を土台に、リターンの高い事業へ資金を振り向ける。この構図こそが、次章で見る年収水準の裏側にあります。
年収の比較:実はほぼ互角
では、気になる年収です。有価証券報告書に載る「平均年間給与」(賞与・基準外賃金を含む)を、銀行本体3行とリース大手6社で並べてみます。
| 業界 | 会社 | 平均年間給与(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行 | 三井住友銀行 | 約933万円 |
| 銀行 | 三菱UFJ銀行 | 約914万円 |
| 銀行 | みずほ銀行 | 約870万円 |
| リース | オリックス | 約1,039万円 |
| リース | 三菱HCキャピタル | 約1,029万円 |
| リース | 三井住友ファイナンス&リース | 約990万円 |
| リース | 芙蓉総合リース | 約978万円 |
| リース | みずほリース | 約971万円 |
| リース | 東京センチュリー | 約931万円 |
銀行本体3行が約870万〜933万円(平均年齢は各行とも40〜41歳台)、リース大手6社が約931万〜1,039万円。水準はきれいに重なっています。「銀行のほうが年収が高い」というイメージは、少なくとも有報ベースの平均値では成り立ちません。
落とし穴:「FGの年収」は銀行員の年収ではない
年収を調べると、「三井住友フィナンシャルグループ 約1,180万円」「三菱UFJフィナンシャル・グループ 約1,170万円」「みずほフィナンシャルグループ 約1,166万円」といった数字が目に入ります。
しかし、これは持株会社(FG)本体の従業員だけの平均です。FG本体の従業員は1,678人〜3,637人と少数で、その多くは銀行などグループ会社からの出向者です。2万人〜3万人規模の銀行本体の平均とはまったく別物であり、銀行員の年収水準を表す数字ではありません。比較するときは、必ず銀行本体の数字を使ってください。
上がり方の違い
水準が互角でも、「上がり方」は違います。銀行は年次や職務・資格に連動した階段型の色合いが濃く、大きな組織の中で着実に積み上がっていく設計です。
リースは、会社規模に対して専門性の高い人材の引き合いが強く、スキルや実績による「値付け」が効きやすい業界です。そのため、中途採用市場での提示額が上がりやすい傾向があります。
なぜリースの年収水準が銀行と互角なのか、その理由の深掘りはこちらで解説しています。
リース6社の顔ぶれや業界内の順位はこちら。
年収だけでなく出世の全体像を知りたい方はこちら。
働き方・転勤の違い
転勤の範囲と頻度
銀行には全国に支店網があり、法人営業のキャリアは支店間の異動とセットで進みます。数年ごとの、転居を伴う転勤は、銀行員のキャリアでは前提に近いものと言えます。地域に根ざして顧客を深く知れる反面、生活拠点が定まりにくい面は否めません。
リース会社の拠点は主要都市が中心で、支店網の規模は銀行とは桁違いに小さいため、転居を伴う転勤の絶対数は少なくなります。異動は本社部門間やグループ会社間が中心で、生活拠点を大きく動かさずにキャリアを積む設計がしやすい業界です。
なお、転勤が少ないことは、経験の幅が狭くなることと表裏一体でもあります。リースでは「転勤で経験を広げる」のではなく、「部門や担当物件を変えて専門性を深める」形でキャリアを作っていくのが一般的です。
働き方の一般的な傾向
残業や休日については企業ごとの差が大きく、一概には言えません。あえて一般論で言うなら、銀行は決算期対応など時期の波が読みやすく、リースは案件のクロージング(契約実行)の時期に業務が集中する、といった傾向の違いがあります。個別企業の実態は、口コミサイトや転職エージェント経由で確認するのが確実です。
採用・転職市場の動き
銀行からリースへ:いちばん太い人の流れ
転職市場で最も目立つのは、銀行からリースへの人の移動です。銀行の法人営業で培った与信のスキルは、リースの営業・審査でもそのまま評価されるため、地銀やメガバンクの出身者にとって、リースは有力な受け皿になっています。
仕事内容の章で見た通り、リースでは与信に「モノを見る目線」が加わります。銀行出身者は与信の土台を持った状態で入れるため、新しい専門性を上乗せしやすい立場にあります。
逆方向の移動が少ない理由
一方、リースから銀行への移動は相対的に少数です。銀行の中途採用は枠が限られ、募集時も即戦力の専門領域に絞られることが多いことが一因です。加えて、リース側で専門性に値段がつくようになると、あえて銀行の階段を上り直す理由が薄れる、という事情もあります。
メガバンクや総合商社とも人を取り合う業界に
かつてリースは、銀行の隣にある「地味な業界」と見られがちでした。しかし近年は、グローバル展開の広がりと事業の専門性の深化によって、求める人材のレベルが上がっています。新卒・中途を問わず、メガバンクや総合商社と人材を取り合う場面が増えているのが実情です。
業界の将来性そのものについては、こちらで整理しています。
→ リース業界の将来性は明るい?地味な業界が「攻めの成長業界」に変わった理由
銀行からリースへの転職は、与信経験がそのまま評価される代表的なルートです。金融業界・ハイクラス転職に強いJACリクルートメントなら、リース各社の非公開求人や、年収の「値付け」の相談も可能です。まずは無料のキャリア相談から。
海外・駐在機会の違い
銀行:海外拠点は大きいが、ポストの競争は激しい
メガバンクの海外拠点網は大規模で、駐在の絶対数自体は少なくありません。ただし、駐在ポストは法人営業や市場部門などに集中し、希望者も多いため、社内の競争は激しくなります。配属部門によっては、駐在の順番が回ってくるまで長い国内キャリアを要することもあります。
リース:規模の割に駐在ポストの比率が高い
リース各社は海外事業の拡大局面にあり、海外拠点の数に対して日本人駐在員のポストが確保される割合は、業界規模の割に高い傾向があります。拠点あたりの日本人スタッフが少人数であることも多く、比較的若い年次で海外拠点の実務を担う機会が回ってくるケースも珍しくありません。駐在をキャリアの目標に置くなら、リースは「穴場」の選択肢になり得ます。
リース業界から駐在を狙う戦略については、こちらで詳しく書いています。
向いている人のタイプ
ここまでの比較を、タイプ別に整理します。
銀行向きの人
- 大きな組織の中で、階段を着実に上っていくキャリアが苦にならない
- 与信や財務分析の専門性を、時間をかけて極めたい
- 全国転勤を受け入れられる
リース向きの人
- 設備や機械など「モノ」に触れる仕事に興味がある
- 顧客と長く伴走し、提案の自由度が高い環境で働きたい
- 専門性で自分の市場価値を値付けしたい
- 将来の海外駐在を狙いたい
結論:タイプ別のおすすめ
- 就活生・第二新卒:年収で選ぶなら互角です。「大きな組織で財務のプロを目指す」なら銀行、「モノと事業に近い場所で専門性を作る」ならリース、という軸で選ぶのがおすすめです。
- 銀行からの転職検討者:与信経験はリースでそのまま値段がつきます。仕事内容の自由度と、転勤の形がどう変わるかで判断してください。
- 駐在志望者:ポストの比率という観点ではリースに分があります。国内で専門性を積みながら駐在を狙うルートが現実的です。
どちらの業界を目指す場合でも、転職エージェントは金融業界に強いところを選ぶのが近道です。エージェントの選び方や比較はこちらにまとめています。
「銀行とリース、自分はどちらが合うのか」をプロの視点で整理したい方は、金融業界に強いJACリクルートメントの無料相談がおすすめです。銀行・リース双方の求人動向を踏まえたキャリアの相談ができます。
よくある質問
Q. リース会社は銀行の下請けですか?
違います。銀行グループに属するリース会社はありますが、独立系の大手も存在しますし、物件の目利きと残価リスクを取るビジネスモデルは、銀行の融資とは別物です。顧客基盤も各社が独自に開拓しています。
Q. 銀行から、リース未経験でも移れますか?
法人営業や与信の経験がある場合、それ自体が中途市場で評価されるスキルです。「モノを見る目線」は入社後に積み上げる前提で採用されるケースが一般的で、銀行出身者はその受け皿として最も多い層の一つです。

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