駐在内示から90日でやる英語準備|赴任前に仕上げる順番と教材の選び方

ビジネス

海外駐在の内示が出た。その瞬間に頭をよぎるのは、たいてい「英語、どうしよう」です。

赴任まで約90日。長いようで、引き継ぎや引っ越し準備と並行すると、あっという間に過ぎていきます。この期間に英語を「なんとなく頑張る」だけでは、ほぼ確実に時間が足りません。逆に、やることを絞って順番を間違えなければ、90日でも「赴任初月を回せる英語」までは十分に届きます。

この記事では、海外駐在を経験した筆者が、内示から赴任までの90日でやるべき英語準備を、フェーズごとに具体化します。ポイントは、語学力そのものよりも「設計」です。何をやるかより先に、何をやらないかを決める。それが90日を活かすコツです。

結論:90日で目指すのは「完璧な英語」ではなく「赴任初月を回せる英語」

まず目標設定から。90日でネイティブ並みの英語力は身につきません。当たり前ですが、ここを誤ると計画全体が崩れます。

目指すべきは「赴任初月を回せる英語」です。具体的には、次の3つができる状態です。

  • 会議で最低限、自分の担当部分の説明と進捗報告ができる
  • 業務メールが滞らず、依頼・確認・お礼のやり取りが自力で完結する
  • 住まいや銀行口座など、生活の立ち上げ手続きを自力で進められる

逆に、内示後に詰め込みがちで、実は効かないものが3つあります。

1つ目は、文法の最初からやり直すこと。中学文法の復習自体は悪くありませんが、90日の使い方としては優先度が低すぎます。初月に必要なのは文法の知識ではなく、場面ごとの「言える型」です。

2つ目は、単語帳の丸暗記。赴任初月に使う単語は、自分の仕事と生活に紐づいたものに限られます。汎用的な単語帳を頭から覚えるのは、時間対効果が最も悪い方法のひとつです。

3つ目は、教材の買い漁り。焦りから参考書やアプリを買い込むと、「買った安心感」で満足して手が止まります。90日で使う教材は、多くて2種類までに絞るべきです。

代わりに効くのは「場面の絞り込み」です。赴任後の自分の仕事と生活で、必ず起きる場面を先に洗い出し、そこから逆算して準備する。この記事のフェーズ分けも、その考え方で組み立てています。

しゅーじ
しゅーじ

筆者も赴任前は「とりあえず文法書を買う」ところから入りました。実際に初月で困ったのは文法ではなく、会議の入り方と生活手続きの言い回しでした。

まず測る(内示直後〜1週目):現在地で配分が決まる

計画の前に、1週間だけ「測定」に使ってください。もったいなく感じるかもしれませんが、現在地が分からないまま走ると、残り80日の配分を誤ります。

測り方は2つです。

1つ目は、スコアの目安です。TOEICなどのスコアが手元にあれば、それが土台の目安になります。大まかな現実はこうです。

  • 600点台まで:基礎の語彙と文型から固める必要がある。フェーズ1の比重を大きく取る
  • 700〜800点台:読む力はある程度ある。実務の「話す・書く」に寄せた準備が効く
  • 900点前後〜:土台は十分。会議の進め方や表現の微調整に時間を使うのが正解

2つ目は、実務での詰まりポイントの洗い出しです。過去の英文メールや会議メモを見返し、「英語で言えなかったこと」「相手の言ったことが聞き取れなかった場面」をメモに書き出してください。これが、そのまま90日で潰すべきリストになります。スコアでは見えない「自分の現場の穴」は、この方法でしか拾えません。

ここで注意したいのは、TOEICのスコアと「話せるかどうか」は別の軸だということです。TOEICは読む・聞く力を測る試験で、スコアが高くても会議で発言できない人は珍しくありません。逆もまた然りです。だからこそ、2つ目の洗い出しが欠かせません。

簡単なセルフチェックとして、「90秒の自己紹介と担当業務の説明」をスマートフォンで録音してみてください。詰まる場所、言い換えに逃げた場所が、そのままフェーズ2で作る定型文の優先順位になります。録音は恥ずかしいものですが、1週目に一度やるだけで、90日の設計精度が大きく変わります。

なお、赴任先の業務要件としてスコア自体を上げる必要がある場合は、測定と並行してスコア対策も計画に入れてください。TOEICの点数を効率よく上げる方法は、別記事で詳しくまとめています。

→ TOEIC700点を最短で突破する方法|金フレ・過去問・リスニング

90日のフェーズ分け:30日ごとに役割を変える

現在地が見えたら、残りの約80日を30日単位の3フェーズに分けます。フェーズごとに役割が違うのがポイントで、同じ勉強を90日続けるのは非効率です。

Day 1–30:土台と口慣らし

最初の30日の目的は「耳と口を英語モードに切り替えること」です。やることは毎日30分の型に固定します。

  • シャドーイング(10分):短いビジネス英語の音声に合わせて、少し遅れて声に出す。耳と口の回路をつなぐ訓練です
  • 会議フレーズの音読(20分):「それでは始めましょう」「一点確認させてください」など、会議の入口とつなぎの表現を、声に出して体に覚えさせる

この時期に新しい文法書へ手を出す必要はありません。狙いは知識の追加ではなく、英語を「聞く・話す」状態に体を慣らすこと。30日続くと、英語の会議音声への抵抗感が目に見えて下がります。

また、この時期に第2節で作った「言えなかったことリスト」を眺め直し、フェーズ2で作る定型文の材料にしておきます。

Day 31–60:仕事英語の定型文を仕上げる

中盤の30日は、自分の業務に直結する定型文のストック作りに使います。駐在員が初月に必ず使うのは、突き詰めると次の4場面です。

  • 自己紹介:着任の挨拶、自分の担当範囲の説明
  • 進捗報告:「〜は予定どおり進んでいます」「〜が遅れており、原因は〜です」
  • 依頼:「〜していただけますか」「期限は〜でお願いできますか」
  • 断りと代替案:「その条件では難しいのですが、代わりに〜なら可能です」

コツは、既成の例文をそのまま覚えるのではなく、自分の業務内容に置き換えて書き直すことです。「進捗報告」の型に自分のプロジェクト名や数字を入れた文を10本作れば、それがそのまま赴任初月の武器になります。

参考までに、4場面の「型」の例を示します。いずれも難しい単語は使っていません。初月に必要なのは、こういう平易な文を淀みなく出せることです。

  • 自己紹介:”I’m in charge of ○○.”(私は○○を担当しています)
  • 進捗報告:”We’re on track so far.”(今のところ予定どおりです)/”We’re behind schedule because ○○.”(○○のため遅れています)
  • 依頼:”Could you share the file by Friday?”(金曜までにファイルを共有いただけますか)
  • 断りと代替案:”That timeline is a bit tight for us. Would Monday work instead?”(その日程は少し厳しいです。代わりに月曜ではいかがでしょう)

これらを自分の業務の単語に入れ替えるだけで、実用的なストックになります。

そして週2〜3回、オンライン英会話などで実際に口に出して使う場を作ってください。書いただけの定型文は、本番では出てきません。声に出した回数が、そのまま本番での再現率になります。

しゅーじ
しゅーじ

定型文は「作って終わり」にしないこと。声に出した回数が、そのまま本番で出てくる確率です。

Day 61–90:現地シミュレーションで仕上げる

最後の30日は、赴任後の生活を具体的にシミュレーションする期間です。

仕事面では、着任初週の会議を想定します。自己紹介から担当業務の説明、想定される質問への答えまでを通しで練習し、できれば英会話レッスンの中でロールプレイとして再現してください。

生活面では、立ち上げ手続きの言い回しを固めます。住まいの契約や設備の不具合連絡、銀行口座の開設、携帯電話の契約、体調不良のときの連絡など、「現地で必ず一度はやること」を場面ごとに用意します。トラブル時の表現(遅刻の連絡、約束の変更、助けを求める一言)もこの時期に揃えておくと、初月の安心感が大きく変わります。

細かい工夫として、英会話レッスンの時間帯を赴任先の生活リズムに寄せておくのも有効です。赴任後も同じ枠でレッスンを続けられる形にしておくと、学習が途切れません。

なお、90日計画で一番多い失敗は、「立派な計画が2週間で止まる」ことです。対策は意志の力ではなく仕組みで作ります。学習は「毎日30分」を朝の出勤前など固定の時間に置き、やった日はカレンダーに印をつける。完璧な1時間より、止まらない30分です。忙しい日は10分だけ音読して「つないだ」ことにしていい、という逃げ道ルールも先に決めておくと、ゼロの日がなくなります。

教材・サービスの選び方:90日しかない前提で選ぶ

準備の進め方が決まったら、それを回すための手段を選びます。選択肢は大きく3つで、90日という制約のもとでは向き・不向きがはっきり分かれます。

選択肢90日での強み向いている人注意点
独学(アプリ・参考書)費用を抑えられ、フェーズ1の土台作りと相性がいい学習習慣がすでにある人話す量は自分で別途確保が必要
オンライン英会話「話す量」を確実に買える。フェーズ2・3の実践に最適定型文を本番で使える形にしたい人受け身で受けると効果が薄い。使う題材を自分で持ち込むこと
英語コーチング学習設計と伴走で、短期間の無駄を削れる残り時間が短く、独学の設計に自信がない人費用は最もかかる。90日で結果を出す覚悟とセットで選ぶ

判断の軸は、「現在地」と「強制力が要るかどうか」の2つです。

土台作りが中心で、毎日決まった学習を自分で回せる人は、独学+オンライン英会話の組み合わせで十分に戦えます。一方、「何をやればいいか分からない」「忙しくて後回しにしそう」という人は、設計と進捗管理を外注できるコーチングの価値が上がります。90日しかないからこそ、迷う時間とサボる余地を潰すこと自体に意味があるからです。

主なオンライン英会話と英語学習アプリの比較は、こちらの記事で料金や特徴を詳しく比べています。サービスの候補を絞るときの参考にしてください。

→ 駐在員が本気でおすすめするオンライン英会話&英語学習アプリ

コーチングを検討する場合は、代表的な2サービスを駐在直前の視点で比べた記事も用意しています。「本気で仕上げる」覚悟がある人は、こちらも判断材料にどうぞ。

→ Bizmates vs プログリット徹底比較|駐在直前に本気でビジネス英語を仕上げるなら

迷う場合は、現在地ごとの組み合わせの目安を示します。

  • 600点台まで:独学アプリで土台を作りつつ、オンライン英会話で口慣らし。フェーズ1の比率を厚めにする
  • 700〜800点台:オンライン英会話を主軸に、定型文の実践に時間を集中する。独学は言えなかった表現の補充に絞る
  • 900点前後〜:独学の追加はほぼ不要。英会話やコーチングで「会議の進め方」「表現の自然さ」の調整に使う

共通するのは、「話す量」の確保を外部サービスに任せる点です。90日は、独学だけで話す量を自給できるほど長くありません。

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駐在準備全体との接続:英語だけが準備じゃない

最後に、視野を少し広げます。内示後の90日に押し寄せるのは、英語の準備だけではありません。引っ越し、荷物の仕分け、現地の通信や生活の立ち上げなど、物理的な準備の山も同時にやってきます。

ここで大事なのは、英語学習を「毎日30分の固定枠」として先にカレンダーへ置き、他の準備と競合させないことです。英語は後回しにすると真っ先に削られる項目ですが、唯一「現地で代替が効かない」準備でもあります。荷物は現地で買い足せても、初月の会議は買い足せません。

英語以外の準備全体の段取りは、駐在準備のチェックリストにまとめています。90日のカレンダーを組むときは、こちらと並べて全体像を確認してください。

→ 海外駐在・留学前に必須!完璧なスタートダッシュを決めるための準備リスト

なお、赴任先の環境や生活の雰囲気を具体的にイメージしておくと、フェーズ3のシミュレーションの精度が上がります。各国の駐在環境を比べた記事も、モチベーション作りを兼ねてどうぞ。

→ 金融マンの海外駐在ティア表

まとめ:90日チェックリスト

最後に、90日の進め方を週単位のチェックリストに落としておきます。そのまま自分のカレンダーへ転記して使ってください。

  • Week 1:現在地の測定(スコアの確認+「言えなかったことリスト」の作成)
  • Week 2–5(Day 1–30):毎日30分の型を開始(シャドーイング+会議フレーズの音読)
  • Week 6–9(Day 31–60):定型文4場面(自己紹介・進捗報告・依頼・断りと代替案)を自分の業務版に書き換え、週2〜3回の英会話で実践
  • Week 10–12(Day 61–90):初週会議のロールプレイ、生活手続きとトラブル時の言い回しを整備
  • 赴任直前:定型文リストの最終見直し。赴任後も続ける学習枠(曜日と時間)を先に決めておく

90日のゴールは、英語の完成ではありません。「赴任初月を回せる状態」で現地に入ることです。初月さえ回れば、あとは現地の実務の中で英語は自然に伸びていきます。完璧主義を捨てて、場面を絞り、型を作り、声に出す。この順番さえ守れば、90日は決して短くありません。

赴任後の英語の伸ばし方については、また別の記事で詳しく書く予定です。

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